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設立趣意書

生命科学の必要性と本財団の性格

我国は、今や世界の最長寿国の仲間入りをし、街には商品が満ちあふれ、国民は健康的で文化的な生活を享受し、この繁栄は永遠に続くかのように見える。しかしながら、再生産不可能な有限資源の消費を基盤とする現在の社会システムは、極めて脆弱なものと言わざるを得ないであろう。将来を考えてみると、エネルギー資源の枯渇、食糧生産のための土地の不足などが顕在化することは、それ程遠くない課題であり、更に人口増加、工業生産力の増大が進めば、それは加速度的に早まるものと予想される。このような「有限の壁」を克服し、人類永遠の健全な営みを支える社会システムに移行するための各種方策を模索することは、緊急かつ重要な課題であると思われる。とりわけ再生産生物資源の円滑なリサイクルによる物質循環とエネルギー変換システムの研究に深く関連する「生命科学」(ライフサイエンス)の振興は、未来を開く鍵であると思われる。生物学をはじめ自然科学が著しく発展して来た今日、物理学、化学、医学、農学、薬学などの隣接分野や工学、理学、数学なども加わり壮大な分野へ広がりつつある「生命科学」の研究は、多大な成果を人類にもたらすものである。本財団は、これらの認識に立ち、萌芽期にある「生命科学」の基礎研究を促進し、その成果を応用技術へ反映させることで、新しい社会開発の方策を模索することが出来ると確信する。殊に地域開発の歴史が浅く、経済の低迷する北海道に於いて、新しい科学の研究に基づいた新技術を駆使することは、国内及び国際的視野に於いて先駆的であり、新しい地域社会開発の実現を促進し、本道における科学技術、研究開発の振興、関連事業の創出、道民福祉の向上に寄与することが本財団設立の終局的な意図である。

事業目的

本財団は、健康維持・増進に関連する生命科学(ライフサイエンス)の基礎研究を奨励し、且つ研究者の人材育成及び国際的な人材交流の活性化を促進し、その成果を応用技術の開発へ反映させることにより、学術の振興及び地場産業の育成並びに道民の福祉の向上に寄与することを目的とする。

事業内容

本財団は、先に述べた事業目的を達成するため、次の事業を行う。
⒈ 道民の健全な社会生活環境の建設、及び心身の健康維持、増進に関連する生命科学の基礎研究に対する助成
⒉ 生命科学の研究者の国内留学または海外留学に対する助成
⒊ 生命科学の海外研究者の招聘に対する助成並びに国内研究者の海外派遣に対する助成
⒋ 生命科学の進歩発展に顕著な功績のあった研究者に対する褒賞
⒌ 生命科学に関する研究成果の刊行に対する助成
⒍ 生命科学の研究に必要な文献及び研究論文等を収集し、閲覧及び研究に必要な情報の提供サービス
⒎ 生命科学に関する講演会の開催、並びにその企画に対する助成
⒏ 先端技術関連の研究及び、開発に対する助成並びに研究開発委託
⒐ その他本財団の事業目的を達成するために必要な関連事業

本財団設立に際して

来たる昭和66年、株式会社秋山愛生舘の創業100年を迎えるにあたり、その創業の精神に触れるとき、北海道の開発と共に歩み続けて来たこの意義をあらためて感ずる。殊に明治の開拓期及び第二次世界大戦後の復興期は、厳しい気象条件や生活条件の中で、病気と闘うことを余儀なくされた時代であった。こうした受難な時代を克服し、道民の医療、保健衛生を守る立場から、株式会社秋山愛生舘は、代々「奉仕の精神」を受け継ぎ今日の医薬品総合卸業に至っている。創設以来、「人命の尊重」と「健康を守る」という人類永遠の願いを理念とし、地域に根ざした「まちづくり」推進のために試みた幾多の諸事業の結晶である。また、医学、薬学の振興に向けて人材育成の視点から、地元の教育・教育機関に対する奨学金の助成等、その活動領域は、広く社会全般に求めて来たと言える。このように道内の医療全体の振興の為に、創業精神を貫く姿勢は、私たちにとって今後力強く前進する為の規範であると思える。この規範に基づき、来たるべき時代に対応すべく先人の知恵と精神をここに受け継ぎ、新しい流れを創出しようとするものである。近く21世紀の北海道を展望するとき、道民の価値観及び生活様式の多様化と人口の高齢化に対応出来る、新たな高度福祉社会の建設は必至である。とりわけ、国際化、情報化社会の潮流の中で、医学、薬学をはじめ医療技術の進歩は、この建設に向けて今まで以上に大きな役割を担うものと思われる。また、一方「人間の生命」全般に関する研究テーマの進化と拡大を促す自然科学の基礎研究及び先端技術の研究開発等をはじめ、国際的水準に有する「生命科学の研究」は、健康的で豊かな北海道開発をより着実に推進させるものであろう。こうした今後の北海道開発の課題に対し、創業の精神をもって、健康に裏付けされた、明るい未来社会を築くため、ここに秋山記念生命科学振興財団を設立し、生命科学の振興と地元の人材育成及び地域産業の振興に貢献するとともに道民福祉の向上に寄与していきたい。本財団の設立は、北海道大学薬学部に対する研究助成を、いつの日か再開させたいという先代会長秋山康之進の生前の願いを、より公共的な形として実現しようとするものでもあり、ここに株式会社秋山愛生舘創業100年記念事業としても意義づけようと企図するものである。

 

昭和61年11月30日 設立者 札幌市中央区南1条西5丁目7番地

秋  山  喜  代

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