いのちをつなぎ　いのちを育み　地域と共に歩む

釧路市教育委員会・生涯学習部・阿寒生涯学習課・阿寒湖畔エコミュージアムセンター・マリモ研究室  マリモ学芸主幹

マリモはなぜ阿寒湖で丸くなるのか ― 総合科学的なアプローチによるその生態史の解明

阿寒湖のマリモは、北海道の自然環境や生態系を代表する希少野生生物の１つである。

若菜氏はマリモ研究の第１人者でありこれまでの遺伝子解析から得られた知見は、非常にオリジナリティの高い北海道発信の優れた研究成果であり，北海道の生命科学の進歩発展に長年に亘り顕著な功績をあげた研究者である。

北海道の自然環境の多様性が生み出した特別天然記念物としてのマリモの保護活動や国民への啓蒙活動、地域に根ざした若菜氏の地道な研究活動は高く評価される。阿寒のマリモの生態系保全は今、世界的にも注目されている中、これらの研究・保全活動の先頭にたつ若菜氏の研究活動は本財団賞受賞にふさわしい。

若菜氏は、マリモが、約１万年前に終了した最終氷期の前後に日本列島周辺を起源として世界各地に伝播・分散したと推定される事、直径10cmを超える大きな球状マリモが群生しているのは世界でも阿寒湖とアイスランドのミーヴァトン湖に限られて居るという希少性を明らかにし、また同じ遺伝子を有する事も科学的に証明した。

絶滅危惧種である阿寒湖のマリモに焦点を当て、生育環境調査にとどまらず、諸外国との共同研究、分子系統学的な研究などを国際的・学際的な研究ネットワークを通じて科学的な手法を用いてマリモの生態史全容を解明した。その一貫した研究の貢献度は絶大であり、北海道の自然保護に対する貢献は計り知れない。若菜氏の研究はフィールドを中心とした地道な基礎データの長年の積重ねであり、北海道を拠点とした独創性の高い生命科学研究の代表として高く評価される。また、「マリモ保全対策協議会」の発足、「マリモ保護管理計画」の策定など、特別天然記念物であるマリモの保全に対する多大な尽力についても高く評価する。地域と現場に密着しながら、“世界に通用する北海道の自然史研究”を進めた功績を評価したい。

また、本研究の発展は、今後も植物学及び系統進化学上、重要な研究成果をもたらすことが期待できる。

若菜氏の研究結果は、阿寒湖を舞台にした壮大な生命科学のドラマでもある。マリモが生息する阿寒湖とその周辺を世界自然遺産に推薦・登録しようとしている動きもある中で、この研究が阿寒湖、そして北海道にとって、大きな社会貢献の一つのきっかけになって欲しいという願いも込めて、今年度の秋山財団賞として採択する。

著書、論文に『マリモを守る』「マリモの祖先は海藻？」「マリモの研究の１世紀」「絶滅危惧種マリモの日本国内における生育現況」「阿寒湖におけるマリモの打ち上げ現象」など。

学校法人 盛岡キリスト教学園 理事長、盛岡仙北町教会 牧師

角谷晋次氏は、大学時代に内村鑑三の著作に学び、岩手県山形村（現久慈市）で伝道を始め、同地で1970年「神を愛し、人を愛し、土を愛す」の三愛精神に基づく岩手三愛山村塾を開講し、毎年4泊5日で同塾を開催し、主宰している。開設から43年が経過した本年夏は、新渡戸基金と共催で、「世界の平和と新渡戸稲造の生涯」をテーマに開催する。

また、同氏は、新渡戸基金評議員、新渡戸基金維持会監事などを務めながら、新渡戸基金のフレンズ・セミナーで講師を務めるなど、新渡戸稲造の精神を広く伝えている。

著書、論文に「新渡戸稲造における修養」、「新渡戸稲造とクエーカリズム」「ペンシルヴァニア州におけるフレンド派」、「新渡戸稲造におけるキリスト教精神」など、多数を執筆した。

一般財団法人 教育支援グローバル基金 理事・事務局長

坪内南氏は、東日本大震災で被災した地域の若者が広く社会のリーダーになることで、震災という逆境を乗り越え、生きる意味を見出すことができるという信念の下に、被災地の学生を対象としたリーダーシップ教育事業「ビヨンド トゥモロー」を創設した。

2011年6月ビヨンドトゥモローの運営母体となる一般財団法人教育支援グローバル基金を立ち上げ、理事・事務局長として、被災地の学生たちを対象にした奨学金支給や、リーダーとしての人間的成長を視野に入れた各界リーダーとの対話や、被災地・日本・世界の課題についての討論などを盛り込んだユニークな研修プログラムを実施している。

坪内氏はこのように、日本および世界が今後必要とする人材育成を東北被災地において可能にするという先駆的な事業に取り組み、大きな成果を挙げている。

中垣  俊之（ナカガキ  トシユキ）

贈呈額：100万円

公立はこだて未来大学システム情報科学部  教授

単細胞生物に学ぶ生命知の基本アルゴリズム

吉田  綾子（ヨシダ  アヤコ）

贈呈額：100万円

北海道大学大学院農学研究院  特任助教

プロバイオティクスの脂質代謝制御機構におけるエキソソームの役割

吉田  隆行（ヨシダ  タカユキ）

贈呈額：70万円

北海道大学大学院医学研究科  助教

情動行動を制御する新たな神経回路基盤の探索

舩橋    誠（フナハシ  マコト）

贈呈額：70万円

北海道大学大学院歯学研究科  教授

脳内ヒスタミン神経を介する摂食抑制系に対するヒスチジン摂取および全身運動の影響

山田  珠希（ヤマダ  タマキ）

贈呈額：100万円

北海道大学大学院歯学研究科  助教

癌骨転移巣における骨浸潤破壊に関与する骨代謝関連細胞の役割と作用機序の解明

岸村  栄毅（キシムラ  ヒデキ）

贈呈額：100万円

北海道大学大学院水産科学研究院  准教授

アメフラシが食餌紅藻由来の色素タンパク質から紫色の忌避煙幕を作る経路を探る

荒川  圭太（アラカワ  ケイタ）

贈呈額：70万円

北海道大学大学院農学研究院  准教授

過冷却促進物質と氷核物質の相互作用に関する基礎的研究

小松  康雄（コマツ  ヤスオ）

贈呈額：70万円

産業技術総合研究所・生物プロセス研究部門  研究グループ長

2本鎖RNA安定化技術の開発と、安定な低分子型核酸医薬の創出

丹保  好子（タンポ  ヨシコ）

贈呈額：100万円

北海道薬科大学薬学部  教授

カドミウム毒性の軽減を指向した糖尿病性神経障害治療薬エパルレスタットの新規作用メカニズムに関する研究

丁野  純男（チョウノ  スミオ）

贈呈額：100万円

北海道薬科大学薬学部  教授

線溶機能を搭載した経気道投与型DDSを基盤とする肺線維症治療の新発想

三木  隆幸（ミキ  タカユキ）

贈呈額：70万円

札幌医科大学医学部  准教授

糖尿病による心不全増悪を抑制する新たな治療法の開発

板東  良雄（バンドウ  ヨシオ）

贈呈額：100万円

旭川医科大学医学部  講師

マウス多発性硬化症モデルにおける新しい脱髄機序に対する神経再生の分子基盤の確立

榎木  亮介（エノキ  リョウスケ）

贈呈額：100万円

北海道大学大学院医学研究科  助教

多機能イメージングによる生物時計中枢ネットワークの作動基盤の解明

金田  勝幸（カネダ  カツユキ）

贈呈額：70万円

北海道大学大学院薬学研究院  准教授

脳幹神経に着目した依存性薬物による快情動生成機構の解明

池中  良徳（イケナカ  ヨシノリ）

贈呈額：70万円

北海道大学大学院獣医学研究科  講師

震災の中・長期復興過程における健康影響評価：野生ラットを用いた毒性学的アプローチ

寺岡  宏樹（テラオカ  ヒロキ）

贈呈額：100万円

酪農学園大学獣医学群  教授

北海道および大陸に生息するタンチョウの遺伝的背景の比較

水上  裕輔（ミズカミ  ユウスケ）

贈呈額：100万円

札幌東徳洲会病院付属臨床研究センター再生医療研究部  部門長

自己がん抗原を用いた樹状細胞による個別化がん免疫誘導

夏賀    健（ナツガ  ケン）

北海道大学病院皮膚科  助教

基底膜蛋白による細胞分化の制御機構の解明

中尾    亮（ナカオ  リョウ）

北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター  博士研究員

北海道に生息するマダニが保有する新規クラミジアのゲノム比較解析

藤本  貴史（フジモト  タカフミ）

北海道大学大学院水産科学研究院  准教授

サケ科魚類野生集団の遺伝資源保存汎用技術に関する研究

大野  祐介（オオノ  ユウスケ）

北海道大学大学院薬学研究院  助教

皮膚バリアを形成するアシルセラミドの合成機構の解明

江川  知花（エガワ  チカ）

北海道大学大学院地球環境科学研究院  博士研究員

大規模撹乱後の湿原植生遷移メカニズムの解明

小島  史章（コジマ  フミアキ）

旭川医科大学医学部  助教

PGE₂-EP₁系のシスプラチン誘発急性腎不全の病態形成における役割解明

正谷  達謄（マサタニ  タツノリ）

帯広畜産大学原虫病研究センター  特任研究員

トキソプラズマ原虫潜伏ステージ虫体が誘導する抗ウイルス免疫応答の意義

川原    学（カワハラ  マナブ）

北海道大学大学院農学研究院  准教授

ウシ体内由来胚に相似した遺伝子発現プロファイルを保持する体外胚作出系の開発

中山  翔太（ナカヤマ  ショウタ）

北海道大学大学院獣医学研究科  特任助教

北海道を中心に生息する野生鳥類の金属汚染解明と分子生物学的解析による生体影響評価

池田    博（イケダ  ヒロシ）

札幌医科大学道民医療推進学講座  助教

骨髄微小環境下における骨髄腫細胞、骨髄ストローマ細胞及び単球の相互作用解析

羽田  沙緒里（ハタ  サオリ）

北海道大学大学院薬学研究院  助教

アルツハイマー病早期診断法開発を目指したアルカデイン代謝産物解析

安井  由美子（ヤスイ  ユミコ）

酪農学園大学獣医学群  講師

フコキサンチンによる大腸発癌抑制とテロメラーゼ制御の関与

五十嵐  学（イガラシ  マナブ）

北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター  特任助教

インフルエンザウイルスと亜型間交差反応性抗体の相互作用解析と薬剤設計への応用

寺崎    将（テラサキ  マサル）

北海道医療大学薬学部  講師

新規in vitroモデルによるがん幹細胞標的天然化合物の迅速スクリーニング法

東    恒仁（ヒガシ  ツネヒト）

北海道大学大学院医学研究科  助教

喫煙を原因とする動脈硬化症発症メカニズムの解明と動脈硬化症発症の抑制方法の開発

藤井  貴志（フジイ  タカシ）

北海道立総合研究機構畜産試験場  研究職員

リピートブリーダー牛における子宮内免疫調節と内膜リモデリング機能の解析

次のエネルギー社会を担う人を生み出すエネチェン塾

加納 尚明（カノウ  ナオアキ）  （一社）プロジェクトデザインセンター  代表理事

現在の日本のエネルギーシステムの実態と、目指すべきエネルギー社会の両面を理解し、そのギャップを超えて北海道ならではのエネルギー転換の実現にむけて行動する人を生み出す「塾」。

ハッカの香るまちづくり～地域の伝統的農産物を後世に伝えよう～

井上 真悠（イノウエ  マユ）  北海道美幌高等学校・地域資源応用科  3年

オホーツク管内は世界の70％の薄荷（ハッカ）原料を生産していた地域であり、その歴史・文化、栽培が地域から消えかけている今、プラットホームを形成し、私たちの世代が受け継ぎ、長く受け継がれるものにするべくネットワークを形成し活動をしていく。

ともにつくろう！江別から発信  食文化の創造

堀 和也（ホリ  カズヤ）  学校法人 酪農学園 とわの森三愛高等学校・アグリクリエイト科  3年

牛乳を使った新しい商品（食品）の開発やその販路の開拓、江別発の食文化の提案。また牛乳をＰＲするための企画「牛の学校・いのちの学校」を推進したい。

高校生による被災地とのネットワーク形成

森山 正樹（モリヤマ  マサキ）  札幌市立白石中学校  教諭

大震災から２年が経ったいま、高校生にできることは何かを見つめ直し、自分たちにできることを発信していく活動を行う。その中心メンバーは札幌市立宮の森中学校の卒業生を母体とする。

秋山財団賞

新渡戸・南原賞

研究助成（一般）

研究助成（奨励）

ネットワーク形成事業助成・【Ａ】

ネットワーク形成事業助成・【Ｂ】

※ネットワーク形成事業助成（継続助成分）

合　計

積雪・極寒冷地域のいのちを護る防災・減災への取り組み

根本 昌宏

道内の意思伝達支援普及プロジェクト

杉山 逸子

Rio14pt0  北海道ネットワークプロジェクト

久保田  学

和解と平和のための東アジア市民ネットワーク

呉   明煕

森と里つなぎプロジェクト

陣内   雄

医療スタッフの地産地消  ～ 住民主導で創る世界一の看護学校 ～

森    義和

「みん菜の花」プロジェクト

エップ レイモンド ロイ

歴史は生きる力「れきし・いのち」プラットホームプロジェクト

角    幸博