1. 秋山財団賞:1件 褒賞金200万円
2017年4月1日現在で北海道内の研究機関等に所属し、生命科学の進歩発展に顕著な功績をあげた研究者が対象です。
受 賞 者 |
田中 歩 (タナカ アユミ)氏( 64歳 ) |
所属・役職 |
北海道大学低温科学研究所 生物環境部門 生物適応分野 特任教授 |
受賞テーマ |
クロロフィル代謝の包括的研究 |
受賞理由 |
田中氏の研究は、生命現象の本質の一つである「光合成」の本態「クロロフィル」に関する基礎研究である。すなわち、生化学的手法に加え、それまで植物科学研究では限られた分野でしか使われていなかった分子遺伝学及びバイオインフォマティクスの手法を積極的に利用し、多くのクロロフィル代謝酵素及びその遺伝子群の同定に成功した。田中氏独自の手法によって同定された酵素は、クロロフィル関連代謝酵素の約1/3にも及び、特に「クロロフィルサイクル」の発見は卓越した成果と言える。クロロフィル代謝が植物全体の代謝機能に影響を及ぼすことを解明した氏の研究成果は、植物自体の老化や細胞死、さらに植物の進化とも関連し、発展性が期待できる独創的・先駆的研究成果である。さらに最近の研究成果として、寒冷地植物の光合成、寒冷地の常緑植物の生存戦略における光化学系IIの役割解明など、発展性ある研究課題が次々と生まれている。氏が解明したこれらの現象は、地球規模での気候変動に対応できる技術につながる可能性を秘めており、低温や異常気象等の課題を抱える北海道の農業分野への波及効果も大いに期待され、北海道の主要産業発展の礎となり得る研究といえる。 田中氏の研究業績は、原著英文論文総数130編余りにまとめられ、また汎用的な教科書や事典を含め著書も数多く刊行されている。日本光合成学会(常任幹事、前会長)や日本植物学会(前理事)の役員として研究の発展に奔走する一方、研究成果の発信にも精力的であり、サイエンスカフェや出前授業、市民向け記事やコラムなどを通じての発信、市民に最新の光合成研究を伝えるアウトリーチ活動に尽力されていることも、当財団の方向性や理念と合致している。また、専門外の学生にも門戸を広く開放し、学生の個性を活かした指導のもと研究を遂行し、数多くの有望な若手研究者を排出している点も特筆すべき事柄であり、田中氏の科学者としての能力に加えて、教育者としての卓越した能力とその人柄に帰するものといえる。 【代表的な学術論文】 【代表的な著書】 |
2 -(1)研究助成〈一般〉:13件 1,300万円 [贈呈額:100万円]
北海道内の各種の研究機関等に所属し、生命科学のうち自然科学分野の基礎的研究で優れた研究者を対象とします。
年齢は問いませんが、若手研究者を期待、また自立的或いは共同で研究を行う研究者を対象とします。
研究者氏名 |
髙田 健介(タカダ ケンスケ) |
贈呈額:100万円 |
所属・役職 |
北海道大学大学院獣医学研究科 准教授 | |
研究テーマ |
免疫と脳の記憶をつなぐ分子機構の解明 | |
研究者氏名 |
熊井 琢美(クマイ タクミ) |
贈呈額:100万円 |
所属・役職 |
旭川医科大学医学部 特任助教 | |
研究テーマ |
分子標的薬治療抵抗性の甲状腺がんに対する新規治療アプローチの開発 | |
研究者氏名 |
野津 司(ノヅ ツカサ) |
贈呈額:100万円 |
所属・役職 |
旭川医科大学医学部 准教授 | |
研究テーマ |
過敏性腸症候群の病態におけるCRF-LPS-サイトカイン経路の役割 | |
研究者氏名 |
角家 健(カドヤ ケン) |
贈呈額:100万円 |
所属・役職 |
北海道大学大学院医学研究科 特任研究助教 | |
研究テーマ |
神経幹細胞移植を応用した慢性脊髄損傷の上肢巧緻運動機能改善 | |
研究者氏名 |
好井 健太朗(ヨシイ ケンタロウ) |
贈呈額:100万円 |
所属・役職 |
北海道大学大学院獣医学研究科 准教授 | |
研究テーマ |
北海道の野生動物におけるダニ媒介性脳炎ウイルスの分子疫学および宿主適応機序の解明 | |
研究者氏名 |
木下 一郎(キノシタ イチロウ) |
贈呈額:100万円 |
所属・役職 |
北海道大学大学院医学研究科 准教授 | |
研究テーマ |
非小細胞肺癌のセクレトームを介する抗癌薬耐性化とJARID1a/b阻害による克服 | |
研究者氏名 |
西出 真也(ニシデ シンヤ) |
贈呈額:100万円 |
所属・役職 |
北海道大学大学院医学研究科 助教 | |
研究テーマ |
子どもの虫歯は早寝早起きで予防できるか? | |
研究者氏名 |
加藤 達哉(カトウ タツヤ) |
贈呈額:100万円 |
所属・役職 |
北海道大学病院循環器・呼吸器外科 医員 | |
研究テーマ |
超音波気管支鏡(EBUS)を用いた肺癌に対する新規光線力学的治療(PDT)の確立 | |
研究者氏名 |
乙黒 兼一(オツグロ ケンイチ) |
贈呈額:100万円 |
所属・役職 |
北海道大学大学院獣医学研究科 准教授 | |
研究テーマ |
シスタチオニンβ合成酵素の発現調節を介した新規中枢疾患治療ターゲットの探索 | |
研究者氏名 |
高倉 栄男(タカクラ ヒデオ) |
贈呈額:100万円 |
所属・役職 |
北海道大学大学院薬学研究院 講師 | |
研究テーマ |
高コントラストな自己会合型光音響イメージング試薬の開発 | |
研究者氏名 |
野村 洋(ノムラ ヒロシ) |
贈呈額:100万円 |
所属・役職 |
北海道大学大学院薬学研究院 講師 | |
研究テーマ |
失われた記憶を回復させる神経回路メカニズムの解明 | |
研究者氏名 |
庄子 晶子(ショウジ アキコ) |
贈呈額:100万円 |
所属・役職 |
北海道大学大学院水産科学研究院 特別研究員 | |
研究テーマ |
北海道天売島で繁殖する海鳥を物質輸送者とした水銀汚染の実態と拡散状況の解明 | |
研究者氏名 |
町田 善康(マチダ ヨシヤス) |
贈呈額:100万円 |
所属・役職 |
美幌博物館 学芸員 | |
研究テーマ |
絶滅危惧種エゾホトケドジョウの分子生物学的・分類学的研究 |
(受付順、敬称略。所属・役職等は申込時のものです)
2 -(2)研究助成〈奨励〉:20件 1,000万円 [贈呈額:50万円]
北海道内の各種の研究機関等に所属し、生命科学のうち自然科学分野の基礎的研究で優れた研究者を対象とします。
申込時の年齢が40歳未満で、また自立的研究を行う研究者を対象とします。
研究者氏名 |
宇治 利樹(ウジ トシキ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
北海道大学大学院水産科学研究院 助教 | |
研究テーマ |
雌雄異株アマノリ属を用いた海産紅藻類における性決定機構の解明 | |
研究者氏名 |
宇和田 淳介(ウワダ ジュンスケ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
旭川医科大学医学部 助教 | |
研究テーマ |
オートファジーの制御を目的とした新しい抗癌剤ターゲットの探索 | |
研究者氏名 |
古田 芳一(フルタ ヨシカズ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター 講師 | |
研究テーマ |
TALE-RNAポリメラーゼ複合体によるDNA配列検出系の開発 | |
研究者氏名 |
柏木 仁(カシワギ ヒトシ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
旭川医科大学医学部 助教 | |
研究テーマ |
肝再生における血小板トロンボキサンA2受容体の役割解明 | |
研究者氏名 |
浮田 万由美(ウキタ マユミ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
北海道大学大学院歯学研究院 学術研究員 | |
研究テーマ |
顎口腔領域におけるエピジェネティックな制御機構の関連解明 | |
研究者氏名 |
佐々木 雄一(ササキ ユウイチ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
札幌医科大学医学部 研究員 | |
研究テーマ |
脳梗塞に対するリハビリと骨髄間葉系幹細胞移植併用により得られる脳可塑性亢進の解析 | |
研究者氏名 |
小笠原 泰志(オガサワラ ヤスシ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
北海道大学大学院工学研究院 助教 | |
研究テーマ |
メナキノン新規生合成経路阻害剤の探索 | |
研究者氏名 |
中村 孝司(ナカムラ タカシ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
北海道大学大学院薬学研究院 助教 | |
研究テーマ |
ナノDDSによるがん血管内皮細胞のSTING活性化を介した新規がん免疫療法の開発 | |
研究者氏名 |
奥崎 穣(オクザキ ユタカ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
北海道大学北方生物圏フィールド科学センター 研究員 | |
研究テーマ |
寄生バエにおける捕食被食関係を介した高次分類群間の宿主転換 | |
研究者氏名 |
鈴木 裕(スズキ ユタカ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
北海道大学大学院農学研究院 助教 | |
研究テーマ |
乳房炎防除を目的とした多機能性の新規分泌タンパク質による乳腺バリア調節機能の解明 | |
研究者氏名 |
山崎 智弘(ヤマザキ トモヒロ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
北海道大学遺伝子病制御研究所 助教 | |
研究テーマ |
相分離した核内構造体が独立して存在するための分子メカニズムの解明 | |
研究者氏名 |
山田 大翔(ヤマダ タイショウ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
北海道大学遺伝子病制御研究所 助教 | |
研究テーマ |
ヒトサイトメガロウイルス感染症制御に向けた自然免疫応答制御機構の解明 | |
研究者氏名 |
鈴木 孝洋(スズキ タカヒロ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
北海道大学大学院理学研究院 准教授 | |
研究テーマ |
新規炭化水素ジバレランを基盤とする芳香環バイオイソスターへの展開 | |
研究者氏名 |
松尾 和哉(マツオ カズヤ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
北海道大学電子科学研究所 助教 | |
研究テーマ |
細胞分裂を標的とした光制御型抗がん剤の開発とその応用 | |
研究者氏名 |
古堅 彩子(フルゲン アヤコ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
北海道大学大学院薬学研究院 助教 | |
研究テーマ |
自閉症発症リスクに対する胎盤輸送担体の関与の解明 | |
研究者氏名 |
木村 俊介(キムラ シュンスケ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
北海道大学大学院医学研究科 助教 | |
研究テーマ |
気管上皮細胞株からのヒトM細胞の平面培養系の確立 | |
研究者氏名 |
薬師寺 文華(ヤクシジ フミカ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
北海道大学大学院薬学研究院 講師 | |
研究テーマ |
可逆的生体内化学修飾に着目したエイジング治療薬の創製研究 | |
研究者氏名 |
乃村 俊史(ノムラ トシフミ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
北海道大学病院皮膚科 講師 | |
研究テーマ |
魚鱗癬における自然治癒機構の解明とその臨床応用 | |
研究者氏名 |
岡本 孝之(オカモト タカユキ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
北海道大学病院小児科 助教 | |
研究テーマ |
活性化壁側上皮細胞に着目したシクロスポリン腎症の早期発見マーカーの探索 | |
研究者氏名 |
松永 智子(マツナガ サトコ) |
贈呈額:50万円 |
所属・役職 |
函館工業高等専門学校物質環境工学科 准教授 | |
研究テーマ |
ホタテガイ卵巣から得られたカロテノプロテインに関する研究 |
(受付順、敬称略。所属・役職等は申込時のものです)
2 -(3)研究助成〈アレルギー特別〉:3件 300万円 [贈呈額:100万円]
北海道内の各種の研究機関等に所属し、生命科学のうち自然科学分野の基礎的研究で優れた研究者を対象とします。
年齢は問いませんが、若手研究者を期待、また自立的或いは共同で研究を行う研究者を対象とします。
ただし申込時、大学の教授、研究機関の部長クラスは除きます。
研究者氏名 |
長門 利純(ナガト トシヒロ) |
贈呈額:100万円 |
所属・役職 |
旭川医科大学医学部 助教 | |
研究テーマ |
シラカバ花粉症に関与するヘルパーT細胞と樹状細胞のダイナミックな相互作用の解析 | |
研究者氏名 |
高野 賢一(タカノ ケンイチ) |
贈呈額:100万円 |
所属・役職 |
札幌医科大学医学部 准教授 | |
研究テーマ |
ヒト鼻粘膜上皮における転写因子p63をターゲットとした新規アレルギー治療戦略 | |
研究者氏名 |
竹崎 俊一郎(タケザキ シュンイチロウ) |
贈呈額:100万円 |
所属・役職 |
北海道大学病院小児科 医員 | |
研究テーマ |
小児シラカバ花粉関連食物アレルギー罹患率、臨床症状、コンポーネント抗体の検討 |
(受付順、敬称略。所属・役職等は申込時のものです)
3.ネットワーク形成事業助成【A】
【A】“地域をつなぐ”プロジェクト:3件 300万円 [贈呈額:100万円(3件)]
(2017年度~2019年度までの3年間継続助成)
北海道において、さまざまな領域で直面する社会的課題を解決するために、共通の目標に向かってさまざまな人々が「プラットホーム」を形成し分野横断的な「ネットワーク」を構築しながら、持続的な「地域をつなぐプロジェクト」を推進して、地域が必要とする新たな公益の担い手を目指す「プロジェクト」を支援します。
プロジェクト名 |
北海道自伐型林業推進プロジェクト ~誰もが参画できる林業新時代へ~ |
代表者 |
岩﨑 芳吉(イワサキ ヨシキチ) 北海道自伐型林業推進協議会 代表理事 |
概要 |
道内の自伐型林業を目指す個人・団体に呼びかけ、技術や副業としての森業開発を研修等により共有化・ネットワーク化し、道内最大の資源である森林資源を活用した就業拡大を目指す。 |
プロジェクト名 |
わくわくドキドキ古着で作る循環型社会 ~つながろう北海道 |
代表者 |
伊藤 三恵(イトウ ミメグ) NPO北海道club 代表、Café tone 代表、歌手 |
概要 |
ごみ(古着・廃プラ)を資源にする新しいリサイクルの技術を学ぶ講座と、わくわくドキドキのリサイクルイベントで楽しいリサイクルを発信し、循環型社会実現に向け貢献するプロジェクト。 |
プロジェクト名 |
世代をつなぐ森づくりプロジェクトと芸術祭 |
代表者 |
国松 希根太(クニマツ キネタ) 飛生アートコミュニティー 代表 |
概要 |
白老町の過疎集落で継続されている森づくりと芸術祭の活動を軸とし、地域の歴史風土や地理、生活に着目したリサーチを深めると同時に、近隣地域とのネットワークの形成強化に努めるプロジェクト。 |
(受付順、敬称略。所属・役職等は申込時のものです)
【2017年度 秋山財団 各種助成金】
区 分 |
件 数 |
金 額 |
1. 秋山財団賞 |
1件 |
2,000,000円 |
2-(1) 研究助成〈一般〉 |
13件 |
13,000,000円 |
2-(2) 研究助成〈奨励〉 |
20件 |
10,000,000円 |
2-(3) 研究助成〈アレルギー特別〉 |
3件 |
3,000,000円 |
3. ネットワーク形成事業助成【A】(新規) |
3件 |
3,000,000円 |
※ ネットワーク形成事業助成 (継続) |
7件 |
5,000,000円 |
合 計 |
47件 |
36,000,000円 |
※ネットワーク形成事業助成(継続助成分)の概要
【2015年度に採択となったプロジェクト(2017年度終了)】
プ ロ ジ ェ ク ト 名 |
代 表 者 |
2017年度 |
厳冬期の災害に向き合い、 (「地力(ちぢから)」の向上でいのちを護る 《 A“地域をつなぐ”プロジェクト 》 |
根本 昌宏(ネモト マサヒロ) 日本赤十字北海道看護大学 教授 |
100万円 |
「生きづらさ」を原動力に 「生きること」の意味を再発信! 《 A“地域をつなぐ”プロジェクト 》 |
日置 真世(ヒオキ マサヨ) |
100万円 |
北の高校生会議 《 B“いのちをつなぐ”プロジェクト 》 |
山本 愛優美(ヤマモト アユミ ) 北海道帯広柏葉高等学校 |
- |
明日のニセコエリアの礎は私達が創る “本物の農”の営みから! 《 B“いのちをつなぐ”プロジェクト 》 |
小山 莉奈(コヤマ リナ) 北海道倶知安農業高等学校 |
50万円 |
【2016年度に採択となったプロジェクト(2018年度終了)】
プ ロ ジ ェ ク ト 名 |
代 表 者 |
2017年度 |
さっぽろ下町プロジェクト ~ヒトとマチをつなぐ 《 A“地域をつなぐ”プロジェクト 》 |
柴田 寿治(シバタ トシハル) シバタグラム社 代表取締役 |
50万円 |
「遊び(Play)」として行うスポーツで 「生き抜く力」を高くする 《 A“地域をつなぐ”プロジェクト 》 |
瀧澤 一騎(タキザワ カズキ) 一般社団法人 身体開発研究機構 代表理事 |
100万円 |
ニウプバレーの周知とブランディング 《 A“地域をつなぐ”プロジェクト 》 |
柳生 佳樹(ヤギュウ ヨシキ) 有限会社 松山農場 牧場長 ファームイントント 代表 |
100万円 |
以上
[…] 今年の秋山財団賞は、北海道大学低温科学研究所 生物環境部門 生物適応分野 特任教授の田中歩先生(http://www.akiyama-foundation.org/news/2343.html)の「クロロフィル代謝の包括的研究」でした。 […]